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「筋力」とは?

ヒトは誰しも歳をとり、それに伴い身体の変化を感じやすくなります。中でも身体が思うように動かないなど「筋力」の低下について実感することは多いでしょう。リハビリや介護の場面で筋力について「力がないから床から立てない」「筋力があるからうまく歩ける」などと表現されることが多いですが、動作はある一部分の筋力だけで行うものではなく、筋力が強ければなんでもできるというわけではありません。筋肉隆々のボディビルダーがどんな競技をやっても一番になるというわけではなく、力が強い力士が100mを9秒台で走れるわけでもありません。


筋力が強くなるとは?

筋肉の断面積(太さ)と筋力は比例すると言われており、もちろん細いよりも太い方が強い力を出すことができます。筋肉は細かな線維の束のようになっており(図1)、あまり使われていない弱い筋肉では、その一つ一つが細いだけではなく、眠っていて働いていない線維が多い状態になっています。

筋肉の構造

一般的に筋肉を太くするためには最大筋力(思いっきり力を入れた限界の力)の70~80%以上の負荷が必要と言われています。強い負荷で筋線維を損傷させて、修復するときに前より強い力が出せるように太くなることで筋力は向上します。しかし、太さだけが力を発揮する要因になるわけではありません。筋肉そのものの強さに加え、「動かす命令をどう出すか」「命令を送る経路が上手く伝えられるか」、「命令を送られた箇所が上手く動いてくれるか」ということが重要になります。筋肉を動かすときは、まず脳から身体を動かそうとする命令が出て、その命令は神経を通り筋肉に伝わります。これらの機能が上手く働くこと、難しく言うと「神経系の適応」も重要になります。脳から筋肉へ命令を送ることを繰り返し行うことで、その信号を筋肉に伝える神経が動員され、それに伴い眠っていた筋線維を起こして運動に動員する筋線維の数を増やすことができます(図2)。つまり、強い負荷でなくても、筋力トレーニングを継続している人ほど多くの筋肉を運動に利用することができるようになります。特に、トレーニングを始めた最初の2週間の筋力の増加は、20%が筋肉そのものの収縮力の向上によるもので、80%は神経系の活性化によるものであるとの報告もあります。つまり筋肉そのもの「力が強くなる」よりも「力を入れやすくなる」要素がかなり大きいと言えます。


筋肉増加の順序

高齢者の筋力増強

筋力は健康な成人の場合20~30歳代をピークに、その後加齢とともに減少し、60歳代ではピーク時と比べ30~40%低下すると言われています。前述したように、筋肉そのものを太く、強くするためにはかなり強い負荷でのトレーニングが必要になります。高齢だから筋肉がつかないということは決してありませんが、高齢者の場合は若い人と比べると筋肉や関節などが傷つきやすかったり、いろいろな内科的なリスクもあったりするため、強い負荷でのトレーニングが行いにくいという問題があります。また、いろいろな理由から十分な食事が摂れず栄養状態が不良な状態の場合、筋肉に強い負荷をかけると逆に筋肉を破壊してしまう恐れもあります。しかし、強い負荷でのトレーニングができないからと言って「筋力」がつかないということではありません。高齢者の筋力向上を目指すときには特に、筋力向上=筋肥大というわけではないということを意識する必要があります。肥大させるだけの負荷をかけられなかったとしても、先に述べた「神経系の適応」がなされれば「筋出力」が向上します。「強い負荷ではトレーニング出来ない。だから力が強くならないからやる意味はない」ということはありません。必要な筋肉が、必要なだけ、必要なタイミングで働くようになれば、結果的に身体を動かしやすくなり、転倒予防や自立度の向上につながります。負荷が弱くても、いつものウォーキングで持久力を保つことになどに加え、スクワットや片足立ち、ラジオ体操など日常生活ではあまり使わない動きを行い、日頃から繰り返し脳から身体を動かす命令を送ることが重要です。


最後に

病気や怪我がない方に対しての筋力・体力低下予防のためのトレーニングは、治療が中心となる病院でのリハビリではなかなか行えないのが現状です。そこで平成30年2月より、当院と同法人である岐阜リハビリテーションホームの通所リハビリ(デイケア)において、介護保険要支援の方(要介護の方も可)を対象としたリハビリ特化型の「短時間デイケア」が開始されます。理学療法士・作業療法士の指導のもと、器具などを使った筋力・体力向上トレーニングや脳トレ、体力チェックなど行い、地域の方の健康維持・増進に貢献できるよう努めてまいります。

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